空手の組手に限らず、さまざまな格闘技や武道でも重要と言われる「間合い」。間合いとは何なのか、なぜそれほど重要なのかなどを徹底的に解説していきます。
先にいうと、今回説明することを理解しているかどうかで組手の成績が左右されます。技術に差がなければ、間合いを理解して操った選手が勝つと言って差し支えないでしょう。
今回は、なんとなく身についていく、あるいはよくわからないまま空手生活を終える「間合い」を理屈で理解できるよう徹底的に解説していきます!
「間合い」とは何か?
まず間合いという言葉の定義を考えます。
え〜っと、相手と自分の距離、ではないでしょうか!
間合いとは、「自分と相手の距離」。多くの人がこのような認識ではないでしょうか。確かにこれは正しいと言えるでしょう。
ただ、これだけでは間合いが試合を左右するほど重要であることを説明しきれません。それでは、組手を左右するような間合いの理屈を深掘りしていきましょう。
「自分の間合い」とは何を意味するのか?
では、よく聞く「自分の間合い」とはなんでしょうか。
自分の攻撃が届く間合い、ですよね?
はじめ君のいう通り、自分の間合いとは、端的に言えば、自分の攻撃が届く間合いとなるでしょう。これも正しいですね。
(・・・?)
(そりゃ、そうだよなぁ?)
間合いをコントロール下に置くためには、さらに深掘りする必要がありますが、とりあえず、この時点でも第一段階として、自分の攻撃がどこまで届くのかを理解することが大切と言えます。
自分の間合いが体に染み付いていないうちは以下のことも理解できないので、まずは打ち込みをこなして、自分の攻撃のリーチを理解しましょう。
3つの間合い
ここで、間合いを3パターンに分けてみましょう。
- 「互いの間合い」。これは、「お互いに自分の間合いである距離間」であり、互いに攻撃が届く危険な間合いとします。
- 「遠めの間合い」。これは、互いの間合いから少し離れた間合いで、攻撃を届けるのは難しいが、気を抜いていいほど離れてはいない間合いとします。
- 「安全な間合い」。これは遠めの間合いより離れた間合いで、比較的安全な状況の間合いであるとします。
今回は、ⅰとⅱの間合いを使って考えていきます。
自分の間合いのはずなのに
組手でこんな経験はないでしょうか。
「絶対に自分の間合いだと思ったのに、簡単にかわされた(返された)」
自分の攻撃が届く間合いだったはずなのに、なぜか相手に簡単に見切られてしまうという経験は誰にでもあると思います。
確かに、そんなことよくあるけど。
オレが遅かったとか動きがバレバレだったとかじゃないの?
はじめ君のいう通り、実戦では、相手が純粋に目が良かったり、回避行動が素早いという可能性があります。その可能性もありますが、それだけで片付けてしまうと、速い相手には勝てません。(確かに速さはアドバンテージではありますが。)
当然色々な原因があり、速さやリーチなどの技量も大きな原因の一つでしょう。ですが今回は「間合い」の観点から、「突きが届かなかった」というこの現象を理解していきたいと思います。
ここからは、この現象を「間合いのパラドックス」と呼ぶことにします。
自分の間合いじゃなかった?
2人がお互いの間合いにいるとします。この時、当然「自分の間合い」なので、攻撃すれば届くことになりますよね。なので、間合いのパラドックスが生じたということは、そもそも自分の間合いではなかった、ということになります。
なのに自分の間合いじゃなかった?
では、なぜ自分の間合いではないのに、自分の間合いだと思ってしまったのでしょうか。
実質、相手は遠めの間合いにいた
それは、相手が遠めの間合いにいながら、こちらの間合いだと錯覚させていたからです。
(何を言ってるんだ?)
この矛盾の原因は、相手の立ち方にあります。本当の自分の間合いであれば、下のような位置関係になるので、攻撃は届くことになります。
しかしこのケースでは、相手は次のイラストのように構えていました。
つまり、遠めの間合いに後ろ足を残したまま、上半身だけお互いの間合いに出していたのです。後ろ足を残しておくことで、実際にお互いの間合いにいるよりも、断然素早く遠めの間合いに体を戻すことが可能になるのです。
以上のことから、相手は「実質」遠めの間合いにいたと表現しました。
どう対処すればいいのか:状況の分析
次に、この相手による間合いのコントロールにどう対処するかについてです。
そもそも、組手中常にこのような状況であるというわけではありません。この状況を説明すると、
- いわゆる「誘い」であり、相手がこちらに攻撃を出させようと、わざと間合いに入ってきている状態。
- 相手は後ろ足を残して前に出てきているので、少し前かがみで腰が落ちている
間合いのパラドックスが発生する状況はこのような一時的な状態であると分析できます。それぞれ解説していきます。
相手に誘われているときの対策
この状況はつまり、相手がこちらの攻撃を誘おうとしている状況といえるでしょう。相手が「間合いのパラドックス」を起こそうとしているこの状況を「誘い」と言います。
こちらにとっては自分の間合い、そして場合によっては相手は隙を見せていたりします。
攻めたくなりますが、ここで単純に攻めると負けです。ここで攻撃するとすれば、上手くフェイントを使ったり、タイミングをずらして攻撃する必要があります。
相手は基本的にこちらの攻撃に反応してカウンターを行うように集中していますので、こちらが攻撃しようとすればカウンターへと動き出します。
なのでここでカウンターを空振りさせることができれば逆にこちらにチャンスが訪れます。
相手が誘っていたら・・・
- 絶対に単純攻撃に出ない
- フェイントなどで逆に攻撃を出させて隙を打つ
- いったん距離をとるのも手(安全な間合いまで)
やっぱり、あからさまにこちらに隙をみせているとか・・・でしょうか。
見極め方:相手の姿勢・構え
間合いのパラドックスを生み出すには、遠めの間合いに後ろ足を残しながら間合いに入ってきていることを説明しました。
なので、相手は歩幅が通常より広がっている状態といえます。頭の高さも少なからず低くなっているでしょう。
また、はじめ君のいったように、誘うために顔を前に出してみたり、上段をあえて空けていたりなど、あからさまに隙を見せていることが多いです。
誘いの見極め
- 相手の腰が落ちている
- 相手の歩幅が広がっている
- 相手に隙が多くなった
以上に該当するような状況では、相手がこちらの攻撃を誘い、間合いのパラドックスを起こそうとしている可能性が高いので注意しましょう。
自分で間合いをコントロールしてみよう
これまでに解説してきたことは、自分で使えればとても強力です。少し遠い間合いから後ろ足を残し、距離をつめて相手の攻撃を誘ってみましょう。
相手が来たら素早く距離を取り、カウンター攻撃に移れるとベストです。カウンターができなかったとしても、まずは攻撃を避けることができれば誘いがうまくできている可能性が高いです。
誘いの流れ
- 遠めの間合いで構える
- 後ろ足を残して体を前に出す
- 相手が来たら前足で床を蹴って素早く後ろへ重心移動
- 攻撃をさばきながらカウンター
まとめ
今回は、自分の間合いが通用しなくなる間合いのパラドックス、つまりは相手による「誘い」についてその原因と対策、自分で使うときのコツについて解説してきました。
間合いは組手で非常に重要な役割を果たします。間合いがわからなければ技が通用しません。しっかりと間合いを理解し、意識して練習することで、いずれは体に感覚としてしみ込んでいきます。