空手の組み手で強くなるには、技を練習したり、練習試合をすることは非常に重要です。しかし、そればかり練習していても限界があります。
今回の記事では、組み手に必要な基礎的な力についてと、そのために効果的な練習メニューを紹介・解説していきます。
こんな方におすすめ!
- 最近空手を始めた方
- 伸び悩んでいる方
組手の基礎的能力の重要性
組み手には、技や試合の勘などはとても重要ですよね。
打ち込みや試合形式の練習などでそれらを鍛えることができます。
しかし、これらを支える基礎的な力というのも確実に存在します。意外とここに目を向けられていないことが多いです。
特に、最近の組手はアクロバティックになってきているので、その「形(かたち)」だけを追い求め、本質的な部分のトレーニングがないがしろになっていませんか?
本質的な部分、つまり組み手に必要な基礎的な能力を鍛えず、技を伸ばすような練習に偏ると、ある程度まで行くと伸び悩みます。
また、高校生や大学生など、新しく空手を始めた方は特に、あまり伸びないまま空手生活を終えてしまうということにもなりかねません。
基礎的な能力とはつまり、組手の技術を支える土台となる能力なのです。
伸び悩んだ方、新しく始めた方は基礎を磨いて伸びしろを作っていきましょう。
組手の基礎的能力とは?
では、組手を支える基礎的な能力とは何でしょうか。私は4つの要素があると考えています。
組手の基礎となる4つの要素
・フットワーク
・瞬発力(筋力)
・動体視力
・柔軟性
それぞれ解説していきます。
フットワーク
フットワーク(ステップワーク)は、組手における「足」となり、移動の自由度に繋がります。
コート(Tatami)上をいかに自由自在に動き回れるかは、フットワークにかかっています。
相手の技から間合いを切ったりかわしたり、一気に間合いを詰めて攻撃したりなど、自分を自在に操る能力となります。
瞬発力
瞬発力は、筋力とも言え、「ここ!」というときに、瞬間的に大きく素早く動き出す力です。
相手がスキを見せた一瞬を突いて攻撃したり、相手が攻撃を仕掛けてきた瞬間にカウンターへ移ったりするための能力です。
動体視力
動体視力は、動く対象を目でしっかりと捉える力ですね。
組み手においては相手の攻撃をしっかり見極めたり、自分の攻撃中相手をしっかり目で追うことにつながる能力となります。
柔軟性
柔軟性は体の柔らかさですが、蹴りのためだけではありません。
深くて腰の入った逆突きを突くためにも、股関節や方周辺の柔軟性が大切です。
ただ、柔軟性に関してはストレッチで伸ばしていくのが1番なので、今回練習メニューとしては紹介しません。
普段のストレッチで伸ばしていきましょう!
フットワーク(ステップワーク)を鍛える練習メニュー3選
フットワークスキルを伸ばすための基礎的なおすすめメニューを3つ紹介します。
前後ステップ
メニューレベル:☆
前後ステップのやり方
このメニューのやり方
- 前に細かいステップを5回
- 後ろに細かいステップを5回
- ↑を繰り返す
ステップの回数は1例なので、前進したければ後を減らすなど工夫して行なってくださいね。
前後ステップで意識すること
細かいステップと素速い方向転換を
このメニューの目的は、2つあります。
メニューの目的
- 細かいステップを身につける
- 瞬間的な方向転換
1つ目については、おもにバックステップで活きてくるステップです。
細かいバックステップをコントロールすることで、相手の攻撃から適当な分だけ距離を取ることができます。
組手では大きく速いステップと同様に細かいステップも重要です。
2つ目については、前から後ろ、背後から前へと切り返す時のことです。
これができることで、進行方向への勢いを瞬間的に切り替えて別の方向へ動き出す力が身に付きます。
すなわち、バックステップ→返し技へとスムーズに繋げるようになります。
瞬発力ともリンクするメニューです。
サイドステップ
メニューレベル:☆☆
サイドステップのやり方
このメニューのやり方
- 「指揮役」と「従者」のセットで行います
- 指揮役はランダムに右か左をジェスチャーで合図
- 従者は指揮役が示した方向へ素速くサイドステップ
サイドステップで意識すること
一瞬反対側に足を踏み出すことで、体の軸を傾けることができ、また床からの反発を利用できるため、より素速いサイドステップが可能になりますよ。
左右の開拓
このメニューはサイドステップの足さばきを上達させることを目的としています。
サイドステップが上手くなることには、以下のような利点があります。
サイドステップの利点
- 相手の攻撃を横にもかわせる
- 攻撃前のフェイントに応用できる
カウンターの際に、真後ろに下がって攻撃するだけでなく、横にかわしてから攻撃することで相手の不意を突きやすくなります。
横にかわすことで回し蹴りのカウンターも行いやすくなります!
また、攻撃前に左右に素速くステップを踏むことでフェイントやタイミングのズラしになるので、攻撃の幅が広がります。
このように、左右にもスムーズなステップを開拓することで組手の自由度がグンとアップします。ぜひ取り組んでみましょう。
マリオネットステップ
メニューレベル:☆☆☆
マリオネットステップのルール
このメニューのルール
- 2人1組になる(仮に「コントローラー」と「人形」と呼称)
- 1m〜2mくらい離れて構える
- コントローラーは縦横無尽にステップで動き回り、時々スイッチも
- 人形はコントローラーとの距離を変えないよう着いて行き、スイッチにも合わせる
2人の関係をマリオネットに例えました。人形役は操られていると思って追従しましょう。
このメニューで意識するポイント
コントローラーは「ついてこさせない!」人形役は「絶対についていく!」という気持ちで行うことで、お互いにとって有意義な練習となります。
コントローラーは進行速度を速めたり遅くしたり、突然方向転換したりなどして、最初にとった間合いを潰すか突き放そうと必死になって行ないましょう。
ステップの集大成メニュー
このメニューはステップに必要な要素が詰まった集大成とも言えるメニューです。
大股のステップ・細かくて小刻みなステップ・左右へのステップ・素速い方向転換などステップに欠かせない要素を盛り込んでいます。
なので、このメニューはある程度前後左右へのステップが身についてから行なうようにするといいですよ。
基礎メニューとして紹介しましたがレベルは高い練習なので先に紹介したメニューなどで基本的なステップ動作を身につけてから取り組むことをおすすめします。
組手の瞬発力を鍛える練習メニュー3選
組手における瞬発力を鍛えられるおすすめのメニューを3つ紹介します。
チューブトレーニング
メニューレベル:☆
チューブトレーニングのやり方
このメニューのやり方
- 2人1組になります(2人を赤と青で呼びます)
- 赤は腰にチューブを巻き、青が後ろでチューブを持ちます
- 赤が進むのに負荷を感じるくらいにチューブを張ります
- 赤は号令に反応し、素速く突きを繰り出します
突きによって体の使い方が違うのでそれぞれの突きで行うといいでしょう。
意識したいポイント
鏡があれば鏡に向かって行なうと、上半身に力みが出ていないか、フォームが乱れていないか確認しながらできるのでおすすめです。
後ろ足で地面を強く蹴る感覚を持って、大きく前に踏み出すようにしましょう。
リーチを伸ばし、瞬発力を鍛える定番メニュー
このメニューの目的は2つあります。
チューブトレーニングの目的
- 突きのリーチを伸ばす
- 瞬間的に突き出す感覚を掴む
チューブによって、前進には普段以上の負荷がかかるので、しっかり後ろ足で地面を蹴ることができなければ前に進んだ突きは突けません。
負荷をかけることでより効率の良い突き方を体が学んでいくのです。
スキを突け!
メニューレベル:☆☆
「スキを突け!」のやり方
このメニューのやり方
- 2人1組になり、お互いに構える
- お互いにその場でステップワーク
- 青は好きなタイミングで前拳を降ろす
- 赤は青の前拳が落ちた瞬間に刻みを突く
ルールは簡単ですが、前拳が落ちた瞬間に動き出すのは難しいですよ。
意識するポイント
意識するポイント
- 突くことに囚われ過ぎて構えすぎない
- 前拳が落ちてからのタイムラグを少なく
前拳が落ちた瞬間に瞬発的に突くことを意識しますが、固まってしまってはいけません。
ステップを踏んで、あくまで動きの中から攻撃に転じるようにしましょう。
シンプルだけどもってこい
このメニューは一見シンプルですが、ステップ中に反応して突き出すというのは、思ったより速くできないと思います。
でもこれが速くなっていくことで、相手がスキを見せた瞬間を打つための瞬発力が上がっていきます。また、相手が動き出したときに先の先でカウンターを決める力も付きます。
先の先や後の先などのカウンターテクニック5選を以下の記事で解説していますのでぜひあわせて参考にしてみてください!↓
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【空手】突きのカウンター5種類とコツを解説【組手のテクニック】
空手の組手においてはカウンターは重要なスキルの1つです。攻撃の技だけ練習していても試合では勝てません。今回は、突きによるカウンター技を5種類紹介し、コツなどを徹底的に解説していきます。 ...
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合図で相打ち
メニューレベル:☆☆☆
「合図で相打ち」のルール
ルール
- 2人1組になる
- お互いに自由なステップワークを踏む
- 第三者がブザー(音)を出す
- 2人ともブザーに反応して突きを出す
合図があったらお互いにそれに反応して突く、というメニューです。
どの突き技にするかは、純粋に速さを競うためにも同じ突き技で行うことをおすすめします。
「合図で相打ち」で意識するポイント
意識するポイント
- 相手より速く!
- ステップワークで固まらない
お互いに突くので、相手と技の速さを競い合うことができます。
しかし、突く方に意識が行きすぎてステップワークを疎かにしないようにしましょう。
より素早く突けるように
このメニューのねらいは、
ひとつ前に紹介した、「スキを突け!」に似たメニューですが、少し上位版です。
お互いが自由なステップワークをしている点、2人とも突く点などでレベルが高くなっています。
このメニューでは、相手と同じ技を突くことにより、突きの速さを競うことができます。
そして、相手より速く突くためには、合図に対する速い反応と高い瞬発力、また、ステップワークから攻撃へと転じるスムーズな足さばきも必要となります。
組手の基礎を高めるメニューの中でも、さらに基礎的な能力を必要としますので、先により低いレベルのメニューを積んでから行いましょう。
組手の動体視力を鍛える練習メニュー2選
最後に、組手の動体視力を鍛えるメニューのおすすめ2選をご紹介します。
見極め
メニューレベル:☆
「見極め」のやり方
簡単な流れ
- 2人1組になり、その場で突きが届く位置でお互いに構える
- 赤はその場で突きを繰り出す
- 青は全ての突きを見極め、受けるかかわす
突きに対する動体視力を高めるメニューです。赤が突く頻度や速さは青のレベルに合わせて調節しましょう。
「見極め」で意識すること
チェックリスト
- 目をつぶらない
- 最適な回避方法を取る
このメニューも見た目は単純で簡単そうですが、動体視力が高くないと、目をつぶってしまったり、反応できなかったりします。
相手の突きを全て見て、その上で受けるかかわすか、最適な防御方法を取れるようになりましょう。
まずは目をつぶらないこと!
このメニューでは、上記のことを目的としていますが、前提として目をつぶらないようにしましょう。
最初は組手中に目をつぶってしまったり顔を背けてしまい、相手の突きをそもそも見ていないということがよくあります。
目を開けることを前提とし、相手の突きを見る能力をつけた上で、さらにどう防御を取るのが最適かを瞬時に判断できるようになるのがメニューの最終的な目的です。
肩・膝タッチ
メニューレベル:☆☆
「肩・膝タッチ」のルール
簡単な流れ
- 2人1組でお互いに構える
- お互い肩と膝に届く程度の距離を空ける
- 相手の肩もしくは膝をタッチできた方が勝ち
- ガードやフェイントも活用
「肩・膝タッチ」のポイント
このメニューで意識したいのは以下のポイントです。
意識するポイント
- 相手の動きをしっかり目で追う
- 相手のスキを探す
- 相手の攻撃にはしっかり対処する
このゲームは、ルールは簡単ですが、攻撃のチャンスを探しながら、防御をしなければいけないので常に気を張っておく必要があります。
動体視力を鍛えるメニューとして紹介しましたが、反射神経も鍛えられるメニューです。
動体視力はそれだけでは役に立ちません。
見切った上で、次の行動につなげなければいけません。
「見極め→対処」という運動神経の回路を増やして太くする、というようなイメージです。
動きは組手と少し異なりますが、運動神経の回路の開発という意味で基礎的能力の底上げになります。
まとめ
今回は組手の基礎的な能力を鍛える練習メニュー9つを紹介しました。
地味ですし、技そのものや組手の勘などを伸ばす実践的なメニューでもありません。
遠回りに思えるかもしれませんが、確実に必要な力ですし、伸び悩んだときは意外に近道になるかもしれませんよ!